大阪高等裁判所 昭和36年(ツ)15号 判決 1961年7月31日
判 決
大阪市大淀区浦江北一丁目二三番地
上告人
野崎運輸株式会社
右代表者代表取締役
野崎吾一
右訴訟代理人弁護士
村林隆一
大阪市旭区千林町三丁目二三六番地
被上告人
藤山一夫事
林石獅
右訴訟代理人弁護士
山本雅造
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告人の上告理由は別紙のとおりである。
甲第一号証によれば、本件約束手形にはつぎの記載がある事実が認められる。
金 額 一〇〇、〇〇〇円
支払期日 昭和三二年二月二八日
支払地 大阪市
支払場所 株式会社神戸銀行大阪駅前支店
振出地 大阪市
振出日 昭和三一年一二月二〇日
振出人 大阪市福島区上福島北一丁目六七
野崎運送株式会社(上告人)取締役社長 野 崎 吾 一
受取人 森切金次郎
第一裏書(白地式)裏書人 森切金次郎
第二裏書(白地式)裏書人 藤山一夫
(藤山一夫が被上告人の通称であることは原判決の確定するところである。)
すなわち、本件約束手形に、最後の裏書として、被上告人の通称である藤山一夫名義の白地式裏書があることは、所論のとおりである。
しかし、手形の最後の裏書まで裏書の連続があり、最後の裏書が白地式裏書である場合、白地式で最後の裏書をした裏書人が現に右手形を所持するとき、反証なき限り、右裏書人は右手形の適法の所持人であると解するのを相当とする。
したがつて、被上告人は本件手形の適法の所持人であると認められる(被上告人が現に本件約束手形を所持していることは原判決の確定するところである)
よつて、所論は採用できないから、本件上告を棄却し、訴訟費用の負担について民事訴訟法第八九条を適用し、主文のとおり判決する。
大阪高等裁判所第八民事部
裁判長裁判官 石 井 末 一
裁判官 小 西 勝
裁判官 岩 本 正 彦
上告理由
原判決には判決に影響を及ぼすこと明なる法令の違反がある。
手形法第七十七条第一項、同第十六条第一項による所謂裏書の連続に資格授与的効力を認め、最後の裏書が白地式なる場合と雖も亦同じと規定し、その最終被裏書人を正当所持人として権利の行使を認めているのである。
然るに原判決に援用された甲第一号証によると訴外森切金次郎から被上告人に白地式裏書が為されているが被上告人から又第三者に対して白地式裏書が為されていることが認められるのであり、右事実と、「最後の裏書が白地式なる場合と雖も亦同じ」なる規定とを合せて考えて見ると、この場合の正当所持人は第三者某であつて、決して被上告人ではない。然るに上告人が被上告人の正当所持人であることを否認したのに拘わらず、この点に考えを及ぼさなかつた原判決には前記法令の違反があることが明らかであり、果して右の様に解することが正しいとすれば被上告人の請求は当然棄却せられるべきであるから、右の法令違反は、従つて原判決に影響があること明らかであるから原判決を破毀せられるべきであると思料する。